新橋にある「ソニア」は、かつて広島のお好み村に入ってたお店が東京に移転してきたのだと聞いた。聞いたからには行かねばならぬ。早速、新橋駅へと降り立ってみた。駅から南方面へ10分ほど歩くと、古いオフィス街へと迷い込む。本当にこんなところへお好み焼屋があるのだろうか。道を間違えたのだろうかと不安になったが、甲高いヘラの音が響いてくることに気がついた。耳を澄ますとビルの地下から聞こえてくる。急いで、そのビルの正面に回ると、ありました。まごうことなきお好み焼屋の店構え。ホッとする。
店内は奥に向かって縦長。左側に鉄板カウンターが並び、右側にテーブルが配置されている。開店間もない時間なのに、店内はほぼ満席。かろうじて残っていたカウンターに座らせてもらい、すかさず注文は肉玉そば。小母ちゃんから「うちは大葉が入ってるんですが」はい、心得てますよ、それでお願いします。あと、鉄板で食べたい旨を伝えると、私の座ったカウンターではダメとのこと。待ちますかと聞かれれば、そりゃ待ちますよ。鉄板で食べられるなら何時間だって待ちます。
数組のテーブル客に順番を譲り、しばらくしてから私のお好み焼も焼かれ始める。そうして、ちょうど鉄板席が空いたタイミングで私のお好み焼も焼きあがる。こちらへどうぞと空いた席に案内してもらう。
よく考えてみると、鉄板席の空くタイミングを予想して焼き始めたんだよね。そしてピッタリと合わせてきた。何という見事な読み。熟練のなせる技だよね。
ありがたくヘラで最初の一口目を切り取る。もうね、食べる前から美味しいんです。ヘラに乗せて、口に運ぶその瞬間、なんだかもう美味しいんですよ。まだお好み焼はヘラの上なのに、口の中に美味しさが広がってるんです。
で、実際に食べても美味しかった。見よう見まねで焼かれたものではない、まさに職人の技。広島に生まれると、子供の頃からお好み焼の手順を見て育つので、誰しもがお好み焼の焼き方を知らず知らず覚えてしまう。そういった素人が思いつきでお好み焼店をやるのとは、一線を画すクオリティ。
そしてもう一つ。使われているそばは、東京の製麺所へ依頼して、納得いくまで試行錯誤して作り上げたもの。その品質は広島で営業されていた時とほぼ同じものとのこと。こういった努力が、この美味しさを生んでいるんだね。