店内は奥に向かって縦長。左側に鉄板カウンターが並び、右側にテーブルが配置されている。開店間もない時間なのに、店内はほぼ満席。かろうじて残っていたカウンターに座らせてもらい、すかさず注文は肉玉そば。小母ちゃんから「うちは大葉が入ってるんですが」はい、心得てますよ、それでお願いします。あと、鉄板で食べたい旨を伝えると、私の座ったカウンターではダメとのこと。待ちますかと聞かれれば、そりゃ待ちますよ。鉄板で食べられるなら何時間だって待ちます。
数組のテーブル客に順番を譲り、しばらくしてから私のお好み焼も焼かれ始める。そうして、ちょうど鉄板席が空いたタイミングで私のお好み焼も焼きあがる。こちらへどうぞと空いた席に案内してもらう。
よく考えてみると、鉄板席の空くタイミングを予想して焼き始めたんだよね。そしてピッタリと合わせてきた。何という見事な読み。熟練のなせる技だよね。
ありがたくヘラで最初の一口目を切り取る。もうね、食べる前から美味しいんです。ヘラに乗せて、口に運ぶその瞬間、なんだかもう美味しいんですよ。まだお好み焼はヘラの上なのに、口の中に美味しさが広がってるんです。
で、実際に食べても美味しかった。見よう見まねで焼かれたものではない、まさに職人の技。広島に生まれると、子供の頃からお好み焼の手順を見て育つので、誰しもがお好み焼の焼き方を知らず知らず覚えてしまう。そういった素人が思いつきでお好み焼店をやるのとは、一線を画すクオリティ。
そしてもう一つ。使われているそばは、東京の製麺所へ依頼して、納得いくまで試行錯誤して作り上げたもの。その品質は広島で営業されていた時とほぼ同じものとのこと。こういった努力が、この美味しさを生んでいるんだね。(2022.4)