さっちゃん 
    • オタフクソース
    • 鉄板カウンター

     赤坂にある広島のお好み焼屋。店は半地下にあり、オタフクソースの暖簾が掲げられている。店内は狭く、鉄板前が6席。テーブルはひとつあり、そこに窮屈そうに8席分ほどの椅子が並べられている。広島のお好み焼屋らしく、壁はカープ選手のサインやポスターでいっぱいだ。お店はご夫婦で切り盛りされている。

     焼き方は、オーソドックスな焼き方を少し改良している。最初に生地をひろげ、魚粉、キャベツ、もやし、刻みネギ、天かすと乗せてひっくり返す。この時点で豚肉は入らない。そして麺を鉄板に出し、ソースをしっかりと絡ませてたあと、おもむろに豚肉を取り出し鉄板に直接並べ、そこに本体を重ねる。広島市内でもたまに見かける焼き方。麺は袋麺、ソースはオタフク。お好み焼以外にも一品料理がいくつかあるが、どれもシンプルな鉄板焼き。

    東京都港区赤坂7-5-33
    03-3589-5720
    開店時間:11:30-22:00、土曜日11:30-20:00
    定休日:日曜日、祝日
    ※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、開店時間や定休日が変更されている可能性があります。


    おみせでおっこん
    さっちゃん

     真夏の最中、さっちゃんのお好み焼を食べに行ってみた。地下鉄で赤坂まで行き、炎天下の中、徒歩で数分ほど歩く。陽炎が見えそうな白い路地の向こうに「さっちゃん」の看板が揺らぐように佇んでいた。その看板をチラ見して薄暗い半地下へ降りていくとオタフクソースの暖簾が待ち受けている。店の中からは、ヘラとテッパンが奏でる音色。たまらず暖簾をくぐると年配の店主が気持ちよく迎えてくれる。

     店内を見渡すとカープ一色。店主と常連さんが昨日のジャイアンツ戦を愚痴っている。「ありゃいけんね。森下じゃけ大丈夫と思ったけど」その呟きが聞こえてきた瞬間、私は広島市内のお好み焼屋へとワープしているように感じた。いや、間違いなくワープしていたはずだ。あの暖簾は、赤坂と広島をつなげる時空制御装置を内蔵しているに違いない。オタフクさんもトンデモナイものを発明したもんだ。

    時空制御装置内蔵の暖簾

     年季の入った鉄板もその裏付けをしてくれてるかのよう。聞いてみるとお店を始めて38年目とのこと。38年分のソースが染み込んだ鉄板の前に腰掛けて、注文は肉玉そば。とても綺麗にとても丁寧に焼き上げたお好み焼は、少しソースが多めで広島らしさも全開だ。お好み焼の焼き方は、広島出身の奥さんが子供の頃に近所のお好み焼屋で見て覚えたとのこと。この古きお好み焼を継承しているお店は広島でも少なくなってきていると思う。大切にしなくちゃね。

    肉玉そば
    (2021.10)